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ヒトと動物の「キメラ」研究、米国立衛生研究所が助成を検討
【AFP=時事】人間の細胞を動物の胚に注入する研究に、米政府の資金が初めて投入されることになるかもしれない。米国立衛生研究所(NIH)は4日、ヒト幹細胞研究のガイドライン変更案と、特定の動物胚にヒト細胞を注入する研究領域案について声明を出し、30日間にわたってパブリックコメント(意見募集)を行うと発表した。倫理面や科学の許容範囲をめぐって懸念の声が上がっている。

 こうした研究は、アルツハイマー病やパーキンソン病といった疾病や不妊などの治療で医学的に大きな突破口を開く可能性があり、不足している移植用臓器の育成にもつながると期待を寄せる声がある。一方、反対派はギリシャ神話に登場するライオンの頭にヤギの胴体、ヘビの尾を持つ怪物の名を引用して、「キメラ」は倫理面で複雑な問題を生み、現代社会の許容範囲を超える恐れがあると指摘している。

 NIHは1年前、ヒト多能性幹細胞を動物の胚に注入する研究は大きな物議を醸すとして、1年間のモラトリアム(一時停止)を決定した。しかし、専門家との協議を経て今回、研究への投資に動き出した。

 NIHの声明によれば、対象となる研究には「ヒト細胞を使って動物の脳に著しい機能的改変を施す」実験などが含まれ得るという。

 これについて、約20年前にヒトと動物のキメラ研究に関する特許を米当局に出願した経験を持つ米ニューヨーク医科大学(New York Medical College)のスチュアート・ニューマン(Stuart Newman)氏は、「例えば人間の脳を持つ豚が誕生したとする。その豚は、なぜ自分たちが人間の実験に使われるのか不思議に思うだろう」とAFPに語った。

「そして、動物の脳を持つ人体が登場した場合『真の人間ではないから実験に利用できる、臓器摘出も可能だ』ということが起きるかもしれない。これは極端なシナリオだが、15~20年前はキメラ胚の作成そのものが極端な事例だと考えられていた」(ニューマン氏)

 ニューマン氏の特許出願は警鐘を鳴らすのが目的だったため、2005年に却下されたことは勝利といえた。だが今、当時の警告は無視されつつあると同氏は危ぶむ。

 コロンビア大学(Columbia University)のロバート・クリッツマン(Robert Klitzman)教授(生命倫理学)は、NIHの今回の動きを「正しい方向への偉大なる一歩」で「さまざまな病気に苦しむ数百万の人々を救う素晴らしい可能性を秘めている」と見ている。それでも、NIHは資金提供する研究を監督する委員会に倫理学者を含めるべきだと強く主張する。「ヒト脳細胞の扱いには気を付けなければならない」

 実験によって誕生した生物にはどんな権利があり、どのように扱われるべきなのか。もしそれが実験室から逃げて、野生動物と交配したらどうなるのか。こうした疑問に、クリッツマン教授は「これはもうSFの世界の話だ」と述べた。【翻訳編集】 AFPBB News
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