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岡村隆史、西野亮廣、山里亮太ら吉本芸人を育てたNSC伝説の講師の生き様
年末年始、テレビを賑わす数多くの芸人たち。普段から芸人がテレビに出ない日はもちろんないのだが、こと年末年始に限って言えば本領発揮。笑い納めや初笑いでひっきりなしにテレビ、ラジオで芸人たちがネタを披露してくれる。

 ナインティナイン、キングコング、南海キャンディーズ………そんな、今や押しも押されもせぬ人気芸人たちを、売れない下積み時代から見つめ続け、そして育てあげた人がいる。吉本NSC(吉本総合芸能学院)講師・本多正識その人だ。

 お笑い芸人と言えば師匠と弟子……なのだが、ことNSCに限って言えば先生と生徒という関係になる。先生とは言えネタの作り方から身の振り方、礼儀作法に至るまでを教え込むその関係は、まさに師匠と弟子なのだ。

 本多正識という名前を聞いて、ピンと来た人はNSC卒業生か芸能関係者くらいだろう。だが、関西お笑い界ではその名を知らぬ者はいない漫才作家でもある。そんな本多氏の授業を受けた生徒はゆうに1万人を超える。その中にはナインティナイン、キングコング、南海キャンディーズにウーマンラッシュアワー、チーモンチョーチュウなど数多くの有名芸人の名が連なる。

 ナインティナインの岡村隆史をツッコミからボケに転向させ、藤井隆をオカマキャラに抜擢し、アンガールズを東京に進出させたのも実は本多氏の功績であり、数多くの吉本芸人は本多氏の存在なくして語れないのである。

 自身初の著書となる『吉本芸人に学ぶ 生き残る力』では、芸人たちの知られざる苦労や、大御所芸人の驚くべき素顔のほか、舞台裏で起きた演者や裏方たちのピリつく一幕などを、赤裸々に綴っている。そんな本田氏に、本書では収まりきらなかったエピソードを伺った。

――キングコング西野さんとのスペシャル対談の中で、西野さんがしきりに「本多先生は怖かった」とおっしゃってるのが印象的でした。

本多「本にも書きましたけど、西野は本当に自信家だったので、絶対褒めてはアカンと思ったんですよ。それが原因でしょうねぇ(笑)。だけど、僕も新人作家のときは、ありがたいことにかなり揉まれましたよ。30年くらい前ですが、当時は無茶苦茶厳しかったですから」

――どんな方から指導を受けたんですか?

本多「それが指導なんてないんですよ。誰も教えてくれないんですが、そういった中ですごく印象に残る出来事がありました。ある正月番組で、オール阪神・巨人さんとご一緒する機会があったんです。ディレクターが巨人さんに台本を渡しに来たんですが、それを見た巨人さんが一言『俺こんなんできひんわ』と。よく見ると、タイトルがあって、下には『ヨロシク』と書かれてるだけ。毎年恒例のコーナーだから作家も手を抜いたんでしょうね」

――直前で『できない』なんて言われたらと思うと、ゾッとしますね。

本多「本当にそう。ディレクター顔真っ青ですよ。結局、それでも本番はキッチリこなしてくれたんですけどね。終わってからディレクターも作家も平謝りでした。それに対して巨人さんが『ちゃんとした台本ください。こんな台本でOK出したらイカンわ。そう思うやろ?』って僕に対して同意を求めるので、もう『はい』というしかなかった(笑)。適当な仕事はできない、わかってると思い込んで仕事はしちゃあかんと思った瞬間でした」

――そのときの思いが今でも仕事に活かされているんですね。

本多「巨人さんのように、ハッキリ言って教えてくださる方は滅多にいないですよ。仕事って、一回失敗したらそれで終わることが多いですよね。構成作家も芸人も一緒だと思います。だからこそ、西野や山里なんかは死ぬほど漫才の練習したり勉強したりするわけです。生き残るために」

――山里さんは勉強熱心なのもさることながら、かなりの策士だったんですね。「しずちゃん獲得」のエピソードは思わず笑いました。(注:本書では山ちゃんが当時別の人とコンビを組んでいたしずちゃんを口説き落とすエピソードを、山ちゃんが初めて告白。かなりの策士ぶりを発揮しています)

本多「僕もそこまでしているとは知りませんでした(笑)。しずちゃんの存在ももちろん大きかったけど、山里本人も西野に負けず劣らず練習の鬼ですから。納得するまでやめない。それに加えて常に本を持ち歩いてものすごく勉強する。だからこそ、男女コンビであれだけ売れることができたんだと思います」

――「常識を知らない者は常識を打ち破ることはできない」と本多さんは本書で持論を展開しています。芸人なら、必ずニュースに目を通して勉強せよと書かれていましたね。

本多「芸人はただ非常識なことをして笑いを取ってると思われがちですが、それは常識を知っているからこそできること。一見アドリブのように見えるネタも、一言一句台本通りということがほとんどです。お笑いとは完全に作られた芸なんです」

 本書の中でも、「常識を知らぬ者は常識を打ち破れない」と強く訴える本多氏。その理由を本書の中でこう語っている。

『常識を知ることで人から引き出せる感情は、「笑い」だけではありません。例えば劇作家の世界では、人を悲しませたり、怒らせたり、感動させたり、人の感情に訴える物語を綴るためには、セオリー=常識を学ぶことは前提条件になります。また、一般社会においても、画期的な技術を発見したり、新商品を作ったり、人とは違った斬新な発送を生み出すためには、やはり常識だったりセオリーを知らないといけません。「非常識」は「常識」があるからこそ成立するのです』(本文から引用)

 他にもナインティナインの岡村隆史との対談では、NSC退学後の裏話を披露。ウーマンラッシュアワーの村本大輔との対談では、ゲスさ全開。同期のキングコングの西野亮廣から言われた一言を根に持ち続けたエピソードを紹介。さらにスペシャルインタビューとして吉本興業社長、大崎洋氏との対談も収録。お笑い芸人としての生き方から、社会人としての生き方まで濃い~内容ばかりを収録している。

 また、こうした対談した芸人たちだけではなく、チーモンチョーチュウ、天竺鼠、かまいたちといった若手コンビからオール阪神・巨人、中田ボタンなど大物芸人まで、数多くの芸人のエピソードを収録。

 本多氏の教えを受けた芸人たちが、厳しい芸能界を生き抜くことができたように、そのサバイバル術はきっと、私達が社会で生きていく上での助けにもなってくれるはず。クスっと笑えてタメになる……そんな一冊なのだ。 
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